呼吸のように・・・

俳句のエッセー

赤きもの

  坊守の赤きものゆれ枯木寺   田島 和生

WEP俳句通信、「近江逍遥」16句より。
「雉」主宰、田島 和生 先生の作品を鑑賞しています。
冬枯れのいろのない世界が広がる中、目の前に赤いものが現れます。
枯木の中に佇むお寺。
その一隅でのことでした。
どうやら、坊守の持ち物であるらしい。
もしかすると、若い坊守かもしれません。
それにしても、地味を重んじるお寺にあって、
赤い色とは、また違った見方ができそうで、微笑ましくあります。
山奥であったとしても、お寺であったとしても、
人間の住まいは、大きく変わることはないのです。
訪問者として枯木の中へ入ってきた作者は、
この「赤きもの」を見つけ、安堵感を覚えたのではないでしょうか。
色を巧みに用いた秀句です。