猪威

  枯山の魂(たま)打ち震ふ猪威   田島 和生

WEP俳句通信、「近江逍遥」16句より。
「雉」主宰 田島 和生 先生の作品を鑑賞しています。
冬の山の木々は、すっかり葉を落として、枯れきっています。
その枯木が山の表を被い、山は眠りについたかのように思えます。
いえ、ともすると、もう芽吹きはないのではないかと思えるほど、
枯木の山は、枯を尽くしているのでしょう。
しかし、その山を揺り動かすように、猪威が鳴り響きました。
凛とした空気を揺り動かし、山を揺り動かして、天に轟きます。
猪威の音は、山に谺して、空へ抜けていくのです。
また、そして、また。
猪威の音が轟きます。
その響きを、なんと、「枯山の魂」が「打ち震えた」と写生しました。
枯尽くした山の魂を目覚めさせる響きだと言います。
山に魂があり、それを揺さぶる響き。何と壮大なスケールでしょう。
まさに天地を揺るがすほどの感性です。
それほどの衝撃をもって捉えられた「猪威」の音。
読む者の魂をも、打ち震わせる秀句です。