呼吸のように・・・

俳句のエッセー

一縷の水

  枯蔦を伝ふ一縷の崖の水   田島 和生

WEP俳句通信より、「近江逍遥」16句。
「雉」主宰 田島和生先生の作品を鑑賞してます。
枯蔦、大木に絡みついて、風にゆらゆらとしている
たくさんの手のひらのような、蔦の葉。
冬になり、葉は枯れて、また落ちて、蔦は命を失ったかに見えます。
その蔦に、命の水が伝わります。
仰ぐと、それは、崖から滴る水。
一縷の流れは、枯れた蔦を伝い、落ちていきました。
枯れ色をなした世界にも、命の萌芽があると、
思わなかったでしょうか。
季節は去り、また訪れます。
その時をつないでいる、水。
一縷の希望は、絶望に終わることはありません。
自然の静かな力を捉えた作品。
枯蔦を伝う、一縷の水を発見した作者の鋭敏な観察力が光ります。