蔦落葉

  山城へ緩急のみち蔦落葉   田島 和生

WEP俳句通信から、「近江逍遥」16句。
「雉」主宰、田島和生先生の作品をご紹介しています。
城というと、江戸城大阪城を思いますが、
それより少し時代は遡る山城とは、簡素な佇まいです。
山に堀切を設け、柵をめぐらせたものが原型。
地形を利用した防塞というのが、近いと思います。
その史跡への道。
近江でしたら、八幡に安土城を始め、多く数えることができます。
敵の攻撃に備えて選ばれた地ですので、
健脚でなければ難しい道のりではないかと想像します。
その道を「緩急」と言い表しました。
それで十分、伝わります。さぞ、きつかったことでしょう。
息を切らせつつ歩いていく道、
蔦落葉を、音を立てて踏んでいったのではないでしょうか。
大木に巻きついている蔦は、青々とした夏を経て、
秋は美しい紅葉を見せてくれます。
その季節もすぎ、侘しい落葉となって道に散っているのは、
権力者の盛衰を思ったかもしれません。
かつての面影を追いつつ、自然と化した山城の道を
今、歩いている自分が、儚い存在のように感じなかったでしょうか。
蔦落葉が、作者の思いを伝えているようです。