呼吸のように・・・

俳句のエッセー

翡翠

  枝川の凍てを翡翠一閃す   田島 和生

WEP俳句通信より。
「雉」主宰 田島 和生 先生の作品「近江逍遥」。
ゆっくりと山道へ入ってゆくと、やがて
道は狭まり、九十九折に見通しがきかなくなります。
そんな中、ふと視界が開け切通しに細い川が現れます。
人が近づけないそこは、水に生きる生物の世界です。
しかし、時は、冬。
水面は鴨が往き交い、吹きすさぶ風に、人は凍てつくばかり。
冬の木立は葉を纏わず、殺伐とした色を称えています。
そこへ、一瞬の閃光が過ぎました。
鮮やかな瑠璃色は、翡翠の飛来。
枝からまっしぐらに川面へ刺さり、また、飛び去ったのでしょう。
あるいは、枝から枝へ渡った瞬間だったかもしれません。
鮮やかな色は、雷の閃光のように眩かったのでしょうか。
宝物を見つけたかのような心の躍動を感じた作者。
その感動が、掲句となったのでしょう。
凍てついた世界に、温かな命の輝きのように詠っています。