呼吸のように・・・

俳句のエッセー

冬椿

  冬椿半ば開きに金の蘂  田島 和生

椿の花の蘂は、ことの他豊かです。
豊かな金色の蘂の、金色の花粉がこぼれ、
真紅の花びらに散っているのは、心に残る美しさです。
開き初の椿は、姿がとても可愛らしい。
幼い子が、唇を開いたかのようにも見えると、いつか話した人がありました。
何かを語りだしそうなお花、椿です。
椿は春のお花ですが、冬に咲く椿を「冬椿」「寒椿」と俳句に詠みます。
掲句は、その冬の椿を歌っています。
冬は、枯れ色に世界が染まり、あるいは
雪で一面が色を失ったかのように真っ白になります。
その冬に、鮮やかな色を点じる椿は、心を打ちます。
これから開こうとする椿に、作者は何を語ったのでしょうか。
僅かに開いた花びらから蘂がのぞきます。
金色の蘂です。
まるで、朝日が差し込むかのように輝く蘂に、
寒中の喜びを見出すとともに、
春への期待が感じられます。
私は、この「半ば開きに金の蘂」という表現に力を感じました。
よく目にする光景でありながら、感動を表すのはとても難しいのですが、
見事の表現されています。
冬の椿の感動を思い起こしました。