呼吸のように・・・

俳句のエッセー

つがい鴨

 番鴨一つ光に湖わたる   田島 和生

三寒四温、寒暖激しく、
今日は、昨日とは打って変わって曇天の寒さでした。
鴨がやって来る山の池を覗くと、鴨の姿はありません。
出掛けているのか、もう帰ってしまったのかは、わかりません。
掲句は、鴨が生き生きと飛ぶ姿を詠んでいます。
真冬の鴨が、日の光を返しつつ、湖の上を飛んでゆきます。
番の鴨は、二羽であるにもかかわらず、あたかも一羽であるかのように
光りを一つにして飛んでいるのでしょう。
凍り付くような寒さに耐えている人間に、
鴨の姿はとても温かに目に映ります。
穏やかな幸せを噛みしめているような、
そのような作品に、読み手の心も和みます。