春の愁い

 つかの間をこの星に酌み春愁ひ   田島 和生

春の愁い。
あまりに勢いよく木々が芽生えるので、
あまりに風がかがやくので、
愁いが心を離れません。
幸せは、みな、目の前を通り過ぎてゆくようです。
切なさは、他のどの季節よりも大きい、春。
楽しいはずのこと、嬉しいはずのこと、
その中にあって、心は愁いに満ちています。
そんな時、心は、日常の些末さを離れ、
壮大な宇宙をへ旅に出ます。
我が身のちっぽけさを思い知らされながら、
逃れようもないこの星に、一時、自分は存在していると、
その侘しさと、我が身を愛おしむ思いに、酒を酌むと言います。
哲学的な感性を発揮した作品。
金沢大学で哲学を学ばれた、
田島先生ならではの作品と言えるでしょう。