呼吸のように・・・

俳句のエッセー

烏瓜

  浮雲へちかぢか山の烏瓜   田島 和生

季語は、「烏瓜」。秋。
烏瓜の花であれば、夏の季語になります。
花は、不思議な、レースのようなお花です。
実は赤く、5センチほどの楕円形をしています。
調べると、霜焼の薬や天花粉の原料となるのだそうです。
ふらふらと赤い実が下がっているのを、
作者は仰ぎ見ているのでしょう。
澄んだ秋の空は高く、白い雲はふんわりと浮かんでいます。
空は、季節を良く表していて、
特に秋の空は格段に美しいのです。
空へのあこがれは、羽根を持たない人間の永遠の思いです。
その空を、人は、ただ、仰ぐしかありません。
ふと気づくと、烏瓜の赤い実が頭上にありました。
空浮かぶ雲に、最も近く、あかあかと見えています。
烏瓜の実に、作者は思いを込めます。
浮雲へちかぢか」
麓から登りきて、最も空に近い、烏瓜の実。
憧れの空近くに見えている赤い実を、
うらやましく思ったのではないでしょうか?