呼吸のように・・・

俳句のエッセー

倶利迦羅山

  山鳴つて雑木落葉の空へ舞ふ   田島 和生

倶利伽羅での作品16句。
角川「俳句」2月号より転載。
田島和生先生は、奇数月に金沢句会へ出席されています。
その折、北陸の各地へ吟行なさっておられるようです。
倶利伽羅山は、倶利伽羅不動寺があり、
源平古戦場としても有名です。
私も良く吟行します。
落葉の季節の景色。良く分かります。
風が吹くと、風の音だけではなく、
風に揺れる木々の音が、怒涛のように押し寄せてきます。
谷から吹きあがる風に、落葉は舞い上がり、頭上高く飛んでゆくのです。
風の音、木々の音、枯葉の音。それらを「山が鳴る」と表現されました。
木々の落葉が空へ舞う。
秋風の勢い、そして気温まで伝わって来るようです。
源平合戦で、牛の角に松明をつけて放ち、
油断した平家軍は、この谷深くへ落ちてゆきました。
歴史の大舞台となったこの地も、今は、穏やかな田舎の風景をとどめ、
ただ信仰の山として、人々が集っています。