呼吸のように・・・

俳句のエッセー

山の日

 山の日は林檎のあまき匂かな   田島 和生

作品「鈴鹿へ」より。
小規模な林檎園でしょうか?
山の民家の辺りに、林檎が成っている風景をおもいます。
日差しが日毎に弱まってくる季節ですが、
だからこそ、貴重な日差しに、心を和ませていると、
林檎の甘い香りが流れてきました。
林檎も、この日差しに、甘さを増しているようです。
林檎の匂いは、空気によって運ばれてくるのですが、
掲句は、山の日差しが匂うのだと言っています。
日差しと林檎の関係を捉えて詠みあげたところが
この句の秀でたところです。
これは、空気や風では、説明に終わってしまいます。
山の日が匂うところがいいのです。
しかも、「匂う」とはせず、「匂いかな」と詠嘆で終えています。
微妙な表現の機微。
優れた一句です。