呼吸のように・・・

俳句のエッセー

真鯉の顔

  雪代を弾き真鯉の顔硬き   田島 和生

雪代の勢いある流れに、真鯉の姿が見えます。
真鯉は、流れに逆らって、顔を向けているようです。
頭は沈んでいるのか、あるいは顔を水面に出しているのか、わかりません。
しかし、流れにひるむことなく、流されることなく、とどまっている姿が見えます。
その真鯉の顔を、「硬い」と言い表し、面白いところです。
雪代を弾いている顔が硬いと思ったのか、顔を強張らせているように思ったのか、
あるいは、その両方であるかもしれません。
雪代に耐えている真鯉の姿は、「顔硬き」の表現により、
哀れさよりも強さを、受け身よりも能動性を感じさせる、
前向きな作品に仕上げられています。
浅春に合った、明るい表現が魅力的です。