呼吸のように・・・

俳句のエッセー

夏館

鳥取城址
仁風閣。
入り口で入場料を払い、冊子を受け取っていたところが、
なんと、明治風ドレスの婦人たちが現れ、
二階へと上って行きました。
「撮影申込書を書いてください!」
という、係の方の声がして、
これから何かの撮影があり、そのための衣装なのだとわかりました。
のんびり一階フロアを見学し、二階へと足を運びましたら、
まだ、撮影は始まっていませんでした。
「どうぞ」という撮影の方に促され、かつての謁見所を覗くと、
そこは明治の空間でした。
ふんわりとしたドレスを纏った婦人たちは、
衣擦れの音をさせながら、席へと歩みます。
正装の男性たちは、肩を並べて女性を見つめているようです。
ふと、隣室に控えている、背筋の伸びた、一際美しい女性に目が止まりました。
背中の開いたドレスが印象的です。
どうも彼女がこの撮影の主役。
ダンサーのようです。
仁風閣は、窓が開け放たれた夏館。
このような自然光の中のダンサーは、新鮮な印象を受けました。
美しさを追求するダンサーの背中へ、夏日が差します。
みずみずしい光景でした。
残念ながら、撮影までは見ることができませんでしたが、
まれな光景を目にすることができ、幸運でした。
衣擦れの音が似あう、仁風閣でした。