呼吸のように・・・

俳句のエッセー

鴨帰りゆく

  妹子塚はすかひに鴨帰りゆく   田島 和生

小野妹子の塚、つまりお墓ですが、
妹子の墓と伝えられているところは、いくつかあります。
作者は大津の方ですので、これは、滋賀県志賀町「唐臼山古墳」でしょう。
巨大な石棺が露出している古墳を、鴨が横切って渡って行ったのです。
これで、鴨は、しばらくこの地を離れますが、
名残を惜しむかのように、妹子の塚を飛びゆく鴨を
作者は見送っていたのではないでしょうか。
「はすかひに」という言葉が、目に見えて
鴨の勢いを感じさせる表現として生きています。