呼吸のように・・・

俳句のエッセー

金縷梅

  金縷梅の咲くや薬鑵の笛高し   田島 和生

金縷梅の花は、細いリボンをくしゃくしゃにしたような花びらで、
咲き満ちても、ぼんやりとした印象の花です。
黄色のくしゃくしゃした花は、
朧な春の景色に溶け込んで、はっきりとしません。
庭の金縷梅でしょうか。
花を眺めていると、笛吹ケトルの笛が、
けたたましく鳴り出したようです。
ケトルの笛は、朧の春の哀愁を深める音だったのでしょうか。
あるいは、そのはっきりしない景色を吹き飛ばす、
鮮烈な音だったのでしょうか。
一見、まったく接点のない二つのものを
一句に詠みあげて破たんせず、むしろ、
句の景色を広げている、感性の一句です。