呼吸のように・・・

俳句のエッセー

草餅

  草餅や娶らず征きし兵の墓   山 信夫
草餅をお供えしてある、兵士の墓。
若くして出兵し、帰ってくることはありませんでした。
あれから幾年も経て、未だに草餅を供えてくれる家族がいるのでしょう。
好物だったのか、供えられた草餅に思いがこもります。
「娶らす征きし」の「征」という字は、「逝」とは使わず、
死を思う回顧ではなく、出兵した時を偲んでいるところに、
句の深みを増しています。
戦争という重いテーマを、淡々と表現しているところが、
むしろ強烈な印象を与えている一句です。