呼吸のように・・・

俳句のエッセー

うららか

  うららかやほうやほうやの長電話   泊 康夫
句集『麦星』より。
リズム良く、「や」を使い、ひらがなで上五中七をまとめたのは、
うららかさを表現する手法だと思いました。
春のあたたかな雰囲気が詠まれています。
電話をしているのは、作者本人であるかもしれません。
故郷への電話で、つい方言が出てしまいます。
「ほうや、ほうや」と、ついつい長くなってしまったのでしょう。
こちらは加賀能登地方の言葉で、
「そうや」の「そ」が、「ほ」になるのです。
しきりに相槌を打つ「そうや、そうや」は、
「ほうや、ほうや」とか、「ほや、ほや」になります。
七尾市のご出身の泊先生が、医者という激務からひと時切り離されて、
故郷の言葉で、遠慮なく話し込んでいる姿を思いました。
あるいは、同郷の誰かが、懐かしい言葉で会話をしているのを、
楽しく聞いていたのかもしれません。
うららかな春の日によく似合う出来事をとらえた、
泊先生ならではの一句でしょう。