呼吸のように・・・

俳句のエッセー

鑑真

唐招提寺、鑑真和上像。
鑑真は、即身仏を望み、
死を前にして食事も制限して、この姿で亡くなりました。
聖人ならば、その肉は腐らないと言われていましたが、
日本の気候のせいでしょう。
鑑真の体は、数日で腐り始めました。
その姿を留めるため、一流の職人が集められ、
現在の「鑑真和上像」が仕上げられたそうです。
今、唐招提寺には、復元された鑑真和上像が安置されています。
復元されたものですが、貴重なものです。
特殊なガラスの向こうに仰いだ鑑真の像は、
生きている姿そのものでした。
瞼がふっくらとしているのは、目を病んでいた故のものでしょう。
遠雷がしきりに耳に届き、湧き立つ夏の雲の影がガラスに映り、
鑑真の瞼へかかりました。
鑑真は、美しい日本を、その目で見ることはできませんでした。
しかし、目には見えない日本の国を、深くいつくしんでくださったことは分かります。
それは、当時の人々が、どれほど鑑真を慕っていたか、
この像は十分に伝えているからです。
「鑑真和上像」は、まさしく日本の宝でしょう。