呼吸のように・・・

俳句のエッセー

未央柳(びようやなぎ)

彼女眉目よし未央柳をむざと折るあああああ高浜虚子

未央柳の花は、大きく開き、蕊が豊か。
女性のまつ毛のように美しく立つ蕊。
その未央柳を、美しい彼女は手を差し伸べたかと思うと、ぷっつりと折ってしまった。
なんでもないしぐさが、冷酷で残酷な行為のように受けとめられた。
「むざと折る」に込められた、男性、虚子の驚きが感じられる。
・・・なぜ、摘んでしまうのか。
我がことのみを思う人の世の罪が、瞬間に胸をつらぬいたのかもしれない。
美しさゆえに際立った行為は、むしろ己の勝手な想像を打ち砕いた一矢として、
虚子の心をチクリを刺した痛みだったと言えるかもしれない。