呼吸のように・・・

俳句のエッセー

木槿

   道のべのむくげは馬にくわれけり   芭蕉

むくげは、思いの外高いところに
たくさん花をつけます。
塀の上から八方に伸びていたり、
公園のアーチのように蔓延って、
ラソンの人が下を走っていったり、
農家の庭に巨大なブーケのようになっていたり…

白が清楚で、また数も多いようですが、
底紅という、めしべの近くが紅色の白むくげは、
自然の美しさを思う、芸術的な花です。

蝉しぐれのなか、赤々と花を咲かせるむくげを見て、
何を思うのでしょう。
夏は眩しい季節です。
この眩しさが自分のものになるように
ずっと願っていた頃を思い出します。
いえ、今でもそうかも知れません。
そして、むくげはその眩しさを自分のものとして、
しかし、ひっそりと咲いていました。

美しいものは、価値あるものは、
いつも寡黙なのだと感じます。