大津、「義仲寺」吟行。
それほど広くない敷地に、見どころたくさんである。
山門をくぐったところに、井戸があって、
錆びついた釣瓶が下がっている。
植物は皆、青々としている。
日が傾いてきたので、青葉の影が差す。
その葉の間に、椿の実が青く、大きく成って、艶めいていた。
植物に詳しいKさんが、
「何でも聞いてください」と言うので、
「あれは?これは?」と質問している中に、
この大きな椿の実があった。
何とか俳句にならないか、頭を絞る。
適当に言葉を並べてノートに記し、後で推敲する。
そのような俳句の「もと」をたくさん作る。
やがて、椿の実は、すっかり日陰へ入ってしまった。
それでも、まだまだ日は暮れない。
振り向くと、日差しが、翁堂の前を斜めに差し込み、
日差しの中に、塵が踊っていた。
筧が鳴る。
学生たちが池のそばで談笑していた。
筧が鳴る。
岩に上がった亀が、足を伸ばしている。
池もすっかり日差しが無くなってしまった。
走り書きばかりで埋まったノートを抱え、
椿の実を目に焼き付けて、山門を後にした。