呼吸のように・・・

俳句のエッセー

白鷺

近くの神社へ立ち寄った。
キリスト者になってから、神社へはほとんど足を踏み入れない。
ちょっと懐かしい思いもして、蛙の鳴き声の中を歩いてみた。
牛の像が奉納されていた。
馬じゃないんだ。どうして牛なんだろう…?

そんなことを考えていて、ふと、頭上に羽の音を聞いた。
クワッ、クワッ、クワッ、クワッと、蛙の鳴き声と思ったものは、
実は白鷺の子どもだった。
どの木だろう?そう思って、数本立つ高木から少し離れて見上げると、
ペチャペチャッと、雨が降ってきたかと思った。
糞だった。
間一髪。白々とした地面のしみを見渡して息をついた。

見上げると、白鷺の顔が見えた。
いきなり羽を広げた。
鶴のような白い羽で、フワっと天辺へ飛びあがる。
それきり、親鳥は空を見ていた。

子どもたちは、まだ艶のない色で騒いでいたが、急に静かになった。
二羽、いや三羽はいる。巣の中で動いていた。
しかし、親鳥は天辺で動かない。

私が見ているのに気付いたのだ。

鷺の子どもたちも、声をたてない。
しばらく我慢比べになったが、とうとう私の負けである。

境内を振り返り、振り返り、後にした。
かなり歩いてから振り向くと、
まだ、親鳥は天辺に動かず、空を見ていた。

梅雨の晴れ間の空は、どこまでもどんよりと曇っていた。