こう見えても、私は運動が得意だ。
確かに今は、体力の問題もあり、スポーツはしていないが、
もともとスポーツは得意なので、何でもそこそこ楽しめる。
小学校では、リレーの選手から外れたことはないし、
水泳は、自由形で新記録のメダルももらった。
今でも小さいが、子どもの頃も背丈がなく不利なこともあったが、
敏捷さでは誰にも負けなかった。
私は、自分の名から「フグ」と男の子たちにからかわれていた。
そのフグは、女子では相手がいなかったからか、
ある時、男子のナンバーワンスイマーM君と差しで勝負することになった。
50メートル自由形。
M君の泳ぎは、校内一と目されていた。
なぜ、このようなことになるのか、さっぱりわからなかったが、位置に着いた。
ホイッスル!飛び込んだ。
パワーは全然違っていた。
水の中でも、どんどん引き離されていくのが分かった。
25メートルのラインを過ぎ、30メートルのラインが見えたころ、
忘れもしない、右前方に、私はM君を捉えた。
M君の腕は水中で伸びきっており、明らかに回転が遅くなっていた。
クロールは、身体の真下を、肘を軸にして水を掻かなければならない。
しかし、M君の肘は伸びきっており、無駄に水を深掻きしていたのだ。
抜ける!
ほとんどペースを落とさぬまま、前方のM君を見据えて、水を掻いた。
近づくにつれ、プールサイドが騒がしくなった。
「えー?抜くんじゃないか?」男子たちの驚愕の声。
抜いた!
皆の歓声が水の中にも轟いた。もう、何言ってるか分からない。
てんでに叫び続けている、その興奮の渦の中、
タッチ!
ゴールした。M君に勝ってしまった。
水から顔を上げると、驚きの顔、歓喜の顔が並び、
皆、口々に私に向かって叫んでいた。
荒い息をして、私はクールに装った。
それ以来、私は「スーパーフグ」と呼ばれた。
小さい頃、お魚だった?私の話、である。