「棘だらけの灌木で、梢上の新芽を摘んで食用にする。
独活に似て香気高く、山菜の王者。」 (『風俳句歳時記』沢木欣一編 平成八年 )
山菜の王者。
その名に恥じず、たらの芽は、美味しい。
天麩羅が好みである。
「たらの芽? 何、それ〜?」と
無教養をさらけ出していた私を心配して、
ある時、職場の仲間が山へ連れて行ってくれることになった。
そこへ、後学のためにと集った、総勢8名ほどで出発する。
自称、山育ちの彼女は、いろいろ解説しながら案内してくれた。
これが、三椏(みつまた)ね…と、お花もずいぶん詳しい。
いよいよ山菜の王者の登場。
私たちは、ビニール袋やら、軍手やら、各々の道具を取り出し、
はしゃぎながら、その辺りを採り尽くしていった。
満足して、また歩き出すと、また発見した。
きゃいきゃい言って、とり尽くす。
これを繰り返していた。
そこへ、上の方から一人のおじさんが歩いてきた。
私たちを憎々しげに見つめる、その目と合う。
誰かは戸惑い、
誰かはぼんやり見つめ、
誰かはそんなことに気付きもせず、
そして、おじさんは通り過ぎて行った。
帰り道で、ガイド役の彼女が、
「この山、あの人のものだったかも知れないね」
とぽつりと言った。
女性ばかり、あまりの人数に気圧されて、
何も言えなかったのかも知れない。
そう、山には持ち主があるのだ。
これを侵害しては、いけない。
社会勉強にもなった一日だった。