呼吸のように・・・

俳句のエッセー

木瓜の花

かつて、先生とお呼びする立場の方が入院なさったとき、

木瓜の花を手にお見舞いに行った。

実は、木瓜だとは知らなかった。

というのは、新年だったので、
お店にある梅のような花を何気に手にした、
それだけだったのだ。

病室で、お花に詳しい看護師の方が、

「まあ、木瓜ですね。Eさん、木瓜ですよ。木瓜。」

と連呼した。

素直に喜んでくださったのだが、
そう、ボケ、ボケ言われると、花の名前に聞こえない。

「ボケ」 ???

と、Eさんは、ちょっと疑ったような、不快な顔をなさった。
かなりご年配だったのである。

悪いことした。

棘もあるし、木瓜の花はお見舞いには不向きだと、肝に銘じた。

しかし、
おかげで、木瓜の花を覚えることができたのだった。