呼吸のように・・・

俳句のエッセー

蜆汁

母が肝臓を患った時、

来る日も来る日も、蜆汁を作った。

蜆の貝殻は、乾燥させ、庭に撒いた。
籠一杯の貝殻も、撒けばそれほどではない。

黒い土の上で、貝殻は蝶蝶のように、可憐で美しい。


その貝殻が化石と呼ばれるようになって、土の中から発見される。
貝塚と称されているとは、縄文人の知らぬことだ。

土の中で層をなしている貝殻は、その量だけで、圧巻である。
どれだけ採取したら、これだけの層になるのだろう。
どれだけ時間がかかったのだろう。

誰でも抱く、疑問。

しかし、誰も答えられない、難しい問題。

単純なことが難しい、考古学の世界である。

この美しい貝殻に魅かれて、
縄文人の世界に思いを馳せてみるのは、

私にとって、豊かな時間なのである。