呼吸のように・・・

俳句のエッセー

春の灯

趣味は何ですか、と尋ねられれば、「俳句」と答えていた。

しかし、俳句も趣味の域を超えたようなので、
最近は、「コーヒー」と答えたりしている。

コーヒーは大好きなのだ。

とはいえ、栽培したり、焙煎したりしているわけではない。
いつかは挑戦したいと思うけれど、
ただ、おいしいコーヒーが飲めたらいいのである。

朝のコーヒーは、覚醒が主な目的だが、胃をいたわって薄めが多い。
焙煎が強いものを薄めに点て、香りを楽しんだりする。

昼食後は、さっぱり感を大切にしている。
また、午後の睡魔を追い払うためにも、かなり濃い目を選ぶ。

午後の休憩は、味よりも量である。
疲れた肉体に喝を入れ、活動を維持できたらいい。
これがないと、私は生きていけない…といつも思う。

夜は、もっとも楽しみなコーヒータイム。
その日の気分によりコーヒー豆を選び、挽きたてをドリップする。

今夜は、ボア・コリーナ
中央からサッとお湯を注ぎ、すぐに止める。
すると、もわーっとコーヒーが盛り上がってくる。
十分に膨らんだところで、お湯をゆっくりゆっくり、円を描きながら注いでいく。
細かな泡の一粒一粒が、春の灯に輝きながら沸き立ってきた。
深みのある褐色の液体は、見たままの濃厚さで、ガラスを静かに染めていった。

一日の疲れも忘れてしまう。

春は名のみの寒い日は続くけれど、
すぐに、艶やかな命を感じさせてくれる時が来るに違いない。

そう期待して、胸を膨らませる。
コーヒーの泡のように…