呼吸のように・・・

俳句のエッセー

俳句鑑賞(春)

春の月夜

熊笹に虫とぶ春の月夜かな 前田普羅 前田普羅。なぜか、普羅の俳句に目を留めてしまうのは、やはり、同じ土地に住んでいるからでしょうか。ちょっとした庭園、山の道に艶めく熊笹。熊笹は、春の雨に艶めき、春の雪に音を立て、いつも身近に見ることができま…

鳥帰る

鳥帰る水と空とのけじめ失せ 沢木欣一 (とりかえる みずとそらとの けじめうせ) 鳥の帰るころとなりました。 田舎の広い空に、小鳥たちが群れて、 水田の上を巡り、飛んでいました。 渡りの準備でしょう。 冬鳥たちは、春を迎えて、活発になっています。 …

春の水

山女の目金環嵌り春の水 沢木欣一 (やまめのめ きんかんはまり はるのみず) 山女はサクラマスの稚魚で、体長はせいぜい20㎝程度。 大きい魚ではありません。 その山女が春の水に目を輝かせていました。 春の水、つまり春の川は、 山の雪解水に嵩を増し、澄…

春の雪

春雪の暫く降るや海の上 前田普羅 (しゅんせつの しばらくふるや うみのうえ) 前田普羅。 先日から、春の雪となっています。 思わず積もってしまったのには、驚きました。 春になってからの寒さは身に堪えます。 掲句、淡い春の雪を詠っています。 海上に…

春光

春光や礁あらはに海揺るゝ 前田普羅 (しゅんこうや いくりあらわに うみゆるる) (まえだ ふら) 前田普羅です。 こちらは日本海でしょう。 「礁あらはに海揺るゝ」とは、恐れ入りました。 まず、「礁」が読めませんでした。 これは辞書で「いくり」と引け…

桃の花

桃の花牛の蹴る水光りけり 沢木欣一 (もものはな うしのけるみず ひかりけり) 昭和18年作。 『沢木欣一集』栗田やすし編(2019)によると、 「入隊を間近に原子公平と遊んだ関西の旅の一句」 だそうです。 学徒出陣式は10月20日。 東京帝大在学中の欣一は…

栗の花

眉濃ゆき妻の子太郎栗の花 沢木欣一 (まゆこゆき つまのこたろう くりのはな) 昭和25年作 「妻の子太郎」と書かれていますが、 妻(細見綾子先生)の連れ子ではありません。 れっきとした欣一、綾子の長男です。 自身が父でもあるというのに、 「妻の子」…

桃の葉

桃の葉の吸ひ込まれゆく山羊の口 沢木 欣一 (もものはの すいこまれゆく やぎのくち) 昭和21年の作品。 思わず目を見張りました。 山羊の口に吸いこまれる桃の葉とは、見事な表現です。 山羊が桃の葉を食んでいるところですが、 シュレッダーに紙が吸い込…

苜蓿(もくしゅく)

苜蓿や義肢のヒロシマ人憩ふ 沢木 欣一 (もくしゅくや ぎしのひろしまびと いこう) 季語「苜蓿」、春。 うまごやし、クローバーです。 昭和29年作。 終戦から9年、がむしゃらに走って来た人々も、 立ち止まって辺りを見渡す余裕が出てきた頃かもしれません…

春の雨

ときいろの雁行橋や春の雨 泊 康夫 雁行橋は、兼六園にある橋です。 亀甲橋とも呼ばれ、六角形の石が 雁が渡るように並べられているところから 名付けられました。 かつては、渡ることもできたのですが、 今は、橋の保護のため、渡ることができなくなってい…

春立つ

眼を瞑る和上に春の立ちにけり 泊 康夫 句集『麦星』より。 「和上」は、唐招提寺、鑑真和上像でしょう。 立春の、まだ肌寒さを感じる頃、 ふくよかな瞼を閉じている和上の像を仰ぎみて、 春の訪れを思いました。 春の気配は、空、雲、そして風に含む かすか…

花楓一歩一歩の磴へ舞ふ

花楓一歩一歩の磴へ舞ふ 田島 和生 磴へ舞ふ、とくれば、「花」かと思います。 が、掲句は「花楓」。 花楓は、キラキラと光りを散らして 零れてきます。 小さな羽根を輝かせて、 楽しそうに降ってきます。 その花楓の季語が、座五の「舞ふ」に 効いています…