呼吸のように・・・

俳句のエッセー

俳句鑑賞〈夏〉

空蝉

泥の目の空蝉二つ僧の墓 和生 空蝉の爪は鋭く、ちょっとやそっとでは離せません。 羽化した時そのままに、木の葉や幹を掴んでいます。 その空蝉が、僧の墓を掴んでいました。 墓とは石のことです。 石を掴んで離れない空蝉は、 どれだけの時を、ここに過ごし…

苔の花

一の宮苔の花咲く力石 和生 「一の宮」という響きが、この場面を揺るぎないものにしています。 一の宮とは、その地域において、もっとも格式の高い宮をいいます。 かつて、日本最古の地図、東大寺の地図では、 「神地」とのみ記されていた、いわゆる「神の宮…

白山の百合

白山の百合を心に逝かれしか 田島 和生 石黒哲夫先生の訃報に接して、お詠みになりました。 田島主宰と石黒先生は、風時代からのお仲間です。 句歴も、両先生ともに70年近くと長く、 10代のころから俳句をお始めになったようです。 掲句、「白山の百合」に思…

相馬御寮

新緑や相馬御寮の馬がゐる 石黒 哲夫 ラジオを聞いてお詠になりました。 お亡くなりになる10日前のことです。 相馬にいらしたことがあったのでしょう。 経験を重ねてお詠みになったのではないでしょうか。 花嫁御寮の馬が用意されています。 特別の風景、相…

夏みかん

おつむ撫でびんづる様へ夏みかん 田島 和生 びんづる様は、寺の御堂の前におわし、 その顔は福福として微笑んで、てらてらと艶めいています。 それもそのはずで、 自分のからだの悪いところは、 賓頭盧さんの同じところをなでると治る、といわれており、 鼻…

父の立ち母坐す遺影夏座敷

父の立ち母坐す遺影夏座敷 田島 和生 このお写真は、 お父様とお母様が、一枚に映っているのでしょう。 若い頃、京都へ旅をしたとき、 このようなご夫婦をお見掛けしました。 門前で、お一人が立ち、お一人が座って、ポーズをとっておられました。 タクシー…

足からめ念ずるかたち蝉の死す

足からめ念ずるかたち蝉の死す 田島 和生 落ち蟬、その死を詠っています。「念ずるかたち」として、作者の心情を表しました。俳句は、客観写生が基本です。見たまま、風景の写生をもって作者の心情を伝えます。よく、写真や絵画に譬えられますが、文字であっ…

軍鶏の目のらんらんとして地の炎ゆる

軍鶏の目のらんらんとして地の炎ゆる 田島 和生 季語「炎ゆ」、夏。珍しい句のように思うのは、「軍鶏」と「炎ゆ」にあるのでしょう。「炎ゆ」の雰囲気は、「炎天」や「炎昼」を思っていただけたらいいと思います。その炎える日最中、軍鶏が目をらんらんと輝…

雲の峰力士の如く崩れけり 和生

雲の峰力士の如く崩れけり 田島 和生 「雲の峰」は積乱雲。 夏の季語です。 夏の青空にもくもくと湧きたつ白雲は、 夏独特のものです。 その雲が隆々と湧きたつ姿を、力士に譬えて詠んでいます。 このように、力強い力士を思ったのは、 作者の師である沢木欣…

金子兜太先生を悼む

水脈の果炎天の墓碑を置きて去る 兜太 金子兜太先生が、2月20日に天に召されました。 兜太先生の俳句は、正直なところ、よく分からないと思っていました。 ただ、上記の俳句は、戦争経験から作られたことがすぐに伝わり、 強く心に迫って来た一句でした。 ト…